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前々回から、経営者の方向けに決算書についてのお話を始めました。自社の決算書分析は本当に役に立ちます。騙されたと思って必ずしていただきたいのですが、今日はその分析結果をどこまで社内開示するかについて考えてみましょう。
それでは今回の本文をどうぞ。
第1章 非上場企業の情報開示
中小企業に転職して、初出社の日、直属の上司に執務場所で紹介される前に、役員との面談がありました。
それほど長い時間ではありませんでしたが、会社の概況や仕事での期待等の話をされ、最後に何か要望は、と聞かれました。その時の私の返答は、
「財務諸表を拝見できませんか?」
というものでした。
どう思ったか、一瞬その役員も返答に窮したようでしたが、ほどなく、それはまた別の機会に、という返答でその打ち合わせは終わりました。
そして結局、その役員との関わりの中で、その後その約束が果たされることはありませんでした。
出社初日の私は、まだものになるかどうかわなからない中途入社の社員です。
財務諸表を気にするより、自分の仕事を早く覚えて、しっかり結果を出してくれたまえ、と通常の方が上司であれば思うでしょう。
私ももし逆の立場であったら当然そう思います。
ですが、マネジメントする側であれば、入ってくる人材のその思いを、その後の業務管理につなげてほしいのです。
どういうことかと言うと、
そのようなことを聞いてくる社員であれば、必ず何らかの肚を持っています。
その肚を活かすか、それともつぶすか。
マネジメントする側であれば、その視点を忘れずに持っていて欲しいわけです。
第2章 開示の効果とリスク
経営状況の開示は、何らかの形ですべきである、ということはすべての経営者の方がお感じのことでしょう。
決算書そのものを開示してしまうのか、売上と利益水準の概数のみを開示するのか。
上場企業であれば、そのようなことを考えることすらないわけですが、非上場企業であれば選択権が経営者側にあります。
そしてオーナーが経営者という中小企業であれば、ますますそれはトップ一人の胸先三寸で決まること、と言っても過言ではありません。
第1章でお話したことは実話ですが、おそらくその会社にはそのようなことを言う社員は管理職であってもそれまで一人もいなかったのではないかと思います。
世間一般でも似たりよったりかなと思いますが、会社経営に関わる数字は経営者がしっかりやってくれればよいことで、我々社員はとにかく上についていくだけだ、と考えている社員の方々はどのような企業でも一定数を占めるはずです。
そしてそれがダメとは一概には言えません。
余計なことを気にせず、眼の前のことに集中して成果を上げてくれる社員。
これは企業にとってはとても貴重な戦力です。
多くの人が我が社の経営状況は一体どうなっているのだ、と半ば抵抗勢力のように経営陣に対してしょっちゅう食って掛かってくるような会社では社風にも影響が出ます。
そのような状況で決算書を開示したとしたら、労使紛争が起きてしまうかもしれません。
ですので、何から何まで情報開示をするべきだ、と申し上げたいわけではありません。
そこは、経営者が自社の状況を見極めたうえで、どのような施策が効果を発揮するかを考え対処方針を決めるべき部分です。
第3章 希望を募るか集団開示か?
ここも私の取った実際の対応をお話しします。
入社初日に偉そうな発言をした世間知らず(?)だった中途入社社員に社長を務める、という大役が回ってきました。
会社の数字の開示については、入社した当時と基本路線は変わっていません。
では自分が代表の立場になって何をしたか。
決算書を、過去のものを含めてじっくり見たうえで、出した結論は、主要な数字を社員に開示する、という方針でした。
役員会の中でオーナーからも了承を得て、進めていきましたが、心の奥底では決算書を開示したいな、という思いはその後もずっと続きました。
しかしながら、ある時点でその思いはだんだん薄らいでいきました。
なぜか。
それはその会社の特殊事情からもしれないのですがこのような理由がありました。
国を取引先とする公共事業/委託事業の受注/受託の場合は、決算書の提出が必要になるのですが、年に数件あるそれらの事業では、その対応は経営者行うのではなく、一般社員が行っていました。
ここでおわかりいただけるとありがたいわけですが、
国に提出する決算書についてはすでに経営者から一般社員に渡っているのです。
これが過去からずっと続いている状況だったからです。
私も担当の時期があって、役所に提出の資料が必要ということで役員に決算書のコピーを貰いに行っていました。
ということは・・・・・。
中途入社日の初日に黙殺されてしまったリクエストはこんなところで実は情報統制がされず、ザルの管理になっていたわけです。
そのような体験をしていたこともあり、自分が社長になった際には、経営計画の説明会で主要な数字の説明をしたあとに、これはあくまで概数であり、本当の決算書を見たい人はいつでも申し出てほしい、ということを何度も言っていました。
そして、その結果わかったことは・・・。
そう、その会社では残念ながら申し出てくれる社員がほとんどいなかったのです。
実はかなりがっくりでした。
しかしこれも貴重な情報です。
そう、前にも記した通り、社員の立場で、それを知っても・・・という思いがほとんどの社員の頭によぎったから、次の行動に出ることはなかった、という、会社そして社員のそこに関するレベルが分かったからです。
何から何まで完璧などということはありません。
強み弱みも様々です。
その中で、決算書分析に関する我が社の現状はこのレベルだ、ということがそこではっきりつかめました。
それは経営者として次の施策を考えるうえでの大事な情報であり、基盤でした。
第4章 開示すればよいというものではない
あくまで前章では私の1社での経営に基づくお話になりますので、すべての企業で当てはまるとは思いません。
参照する一つの情報という捉え方でお願いしたいわけですが、非上場の中小企業であれば、何から何まで決算情報を開示すればよい、というものではないことは意識されるとよい、ということです。
財務諸表、決算書に関してはやはりある程度の基礎知識は必要です。
つまり勉強が必要ということになります。
その程度のことは自己啓発の必須項目である、としている上場企業大手の会社のレベルであれば異なりますが、中小企業の人材レベルを考えると、それこそ営業利益、経常利益、純利益という言葉の違いもよくわからない、ということになる可能性があります。
あらゆることの基本と思っていますが、何かを進めるためにはとにかく現在地の把握が大事。つまり、決算書に関するベースとなる知識レベルがどの水準なのか、の見極めができてこそ、次のステップをどこに定めるのかが見えてきます。決まってきます。
社内での決算書内容の開示を始めた当初はできるだけ多くの情報を出したほうが社員の皆さんも喜んでくれるだろう、と思っていました。
ですがそれは独りよがりの考えでした。気づくまでに数年の期間を要しました。
それまで何も開示がない中で、特に勉強会を含めたレクチャーの場もないのに、いきなり数字の開示を始めても、有効に機能しなかったわけです。
そこに気づいて以降は、開示する情報をどれだけシンプルにするかということに腐心する方向に向きが変わりました。
考えてみれば当たり前のことです。
良かれと思って取り組むことでも、相手が欲していないことであれば響きません。
相手の欲しているレベルと、教育的見地からここまではわかるレベルになって欲しいという2つの視点の融合系が目指す取り組むべきレベル、ということになるわけです。
どうぞあなたなりの開示レベルを探っていただきたいと思います。
(了)
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