なんと無茶な!入社したばかりの新人に新規セミナー立ち上げて、という会社命令!!
- tsunemichiaoki
- 2024年6月11日
- 読了時間: 8分

新しい環境での仕事は、誰しもが不安や緊張を感じるものです。
あるセミナー会社に入社した新人は、セミナー業務に関しては未経験であるにも関わらず、いくつか指示された入社後すぐの仕事の一つに、新規コースの立ち上げ、というものがありました。
開いた口が塞がらない、というのはこのような状況を指す言葉ですね。
会社側は一体何を考えているのか。
そして、さあこの新人は、いったいどのようにしてこの難局を乗り越えたのでしょうか。
さあ、しばしこの無茶振りをする会社と新人の動き方にお付き合いください。
果たして成功するのか、失敗に終わるのか。
「あなた、新しいコース2本、立ち上げてね」と、上司からの指示を受けた新人は、戸惑いを隠せませんでした。
とは言っても上司命令ですからどうしようもありません。
新人は、自分ができることから考えを整理するとともに、行動を開始するしかありません。
新コースのテーマ設定やセミナー開催時間、講師候補はさすがに大きな方針として既に決まっていました。しかしそれ以外のことは何も決まっていませんでした。
さすがに上司自身は会社も無茶ぶりをしているのを感じているのでしょうか。その新人への指導は一生懸命行いました。
既存の開催中のコースの運営管理やそれらのコースを開発していったときの経緯などを体験談を含めて指導、教育していったため、何とかその新人も開催中の通常コースに関する運営管理の仕組みについてはほどなく大枠を理解することができ、そしてそれらを踏まえれば、新規開発のコースをどのように対応していけばよいか、セミナー立ち上げの仕組みについてもおぼろげながらわかってくるようになりました。
とはいえ、その新人。実は全く畑違いの業界から中途入社してきたため、そのセミナー会社に在籍の諸先輩が当たり前のように理解している基本的概念すら、実はよくわかっていない本当に上司からしたら困りもの新人でした。
例えば「標準化」。
この概念は、その会社の人々だけでなく、セミナーを受講するお客様であっても基本中の基本というくらいにわかっている人が多いのに、その新人さんは日本語として意味を理解することはできても、業務遂行上のその意義、価値についてはピントが合っていないのです。
上司もさぞかし困ったことでしょう。
まだ若い新人さんであれば救いようがあるかもしれませんが、その新人さんはもういい歳をしたおっさんだったからです。
そんな厄介な新人を抱えても上司は粘り強く指導するとともに、度量の大きな一面も見せてくれました。
おっさん新人も多少は前の会社では真面目に仕事をしたようで、「私にはこんなに経験がないんだけど…」と、自分自身を卑下してはいても、営業経験は個人客相手でも法人客相手でもそこそこ経験していたこともあることと、調査研究、新商品開発さらには販売まで手掛けた経験があったことから自分の感覚でセミナー開催にはこのようなことを押さえておけばなんとかなるんでしょ、くらいのある意味、知らぬが仏というスタンスで、結構強引に仕事を進めて行っていました。
しかしです。世の中それほど甘くはありません。
早速壁の出現です。
それが何かといえば、講師です。
その新しいセミナーはその会社では内部でのノウハウの蓄積がない分野であったため、コース開発や教材開発は、その専門性をもった講師にお願いしなければなりませんでした。
そしてその講師候補の方との面識も、内部人材の誰ももっていない状況でした。
つまり、アイデアだけあって、このようなセミナーを開発して、販売を開始することができれば、他者との差別化にもなるし、新商品としてお客様に好印象を与えることができるのではないか、という着想に基づいたものだったのです。
経営戦略として、このような着眼点、着想、そして実際に行動に移していく馬力、これはとても大事であり、それができる会社でなければ成長、発展を手にすることはなかなか困難です。
ゆえに、その会社のスタンス及び方向性は何ら間違っていません。
しかしです。
そのような会社にとっての戦略的行動を取る際には通常は経験豊富なベテランを当てる、あるいはそのベテランと経験の浅い人材を組み合わせる、というような対応を取るのが普通の感覚かと思います。
上司も最初は新人対応に多少の時間を割いていましたが、そのうち忙しさにかまけ、結構ほったらかしの状況にそのおっさん新人が講師との折衝を始める頃にはなっていました。
「講師候補の方へのアタックは当たって砕けろだ」と、そのおっさん新人は決意を新たにしました。
飛び込み営業の経験もあったため、その講師候補への接触は正面突破です。
電話営業と訪問営業の組み合わせで、まずは何とか面談の場の設定にこぎつけました。
そして十分かどうかは定かではないものの、講師を引き受けることによるメリットをしっかり相手に提示し、自社のブランド力を誇示する形で信用を獲得することに心を砕き、見事コース開発への協力を得る、という最初の関門を突破することができました。
まずま何よりだったわけです。
ですが、ことはそう簡単には進みません。
相手にとっては、最初感じた際には熱心に言ってくれるし、自分たちにとっても悪い話ではないから引き受けてもよいだろう、と思ったわけですが、いざ蓋を開けてみると、だんだん底の浅さがわかってきます。
最初の誤算は教材作成でした。
講師からすれば、セミナー会社側、そして担当者(おっさん新人です)には専門知識が欠けていることはわかっていました。
しかし少し話をするだけで、講師にとっては愛着をもっている自分たちの業界、そして業界団体であるのに、全くそれらのことを知らない担当者であり会社であることがわかってきたからです。
「おいおい。依頼してくる以上、もう少し私達のことを理解しているのかと思ったが、君は私達のことを何もわかっていないのか。よくぞまあそんな状況で依頼してきたものだな。面の皮が厚いという言葉は知っているようなあ・・・」
講師の方にとってこれでは精一杯押さえたつもりでの嫌味でしょう。
そうなのです。そう言われても仕方がないほどの無知ぶりだったわけですから。
とはいえ、新人は新人でもおっさんですから、その担当も、相手が不快な感情を表してきたことだけは理解できます。
上司等にそれらの状況を報告すると、さすがに上司をはじめとして経営陣は、新人に無茶振りをしすぎていることを少しは理解し、自分たちの人脈の中から、その業界についての知見がある人がいないかをようやく探し出す努力を始めました。
幸いなことにほどなく該当者が見つかり、その方に特別レクチャーをお願いすることで、おっさん新人のみならず、会社としても新たな知見を得ることができ、ようやくおっさん新人の営業力も最底辺レベルから脱却できました。
その努力は何とか講師に伝わり、継続協力の依頼を取り付けることができました。
しかし話はここで終わりません。
講師にさらなる激怒をもらってしまうことになるのでした。
教材開発を何とかしていただいたあとのことです。
ここまでくればあとは集客ができていれば、セミナー開催にこぎつけることができるのですが、舞台裏事情としては、教材作成料のやり取り、というものがあります。
理想は、着手前に大枠を提示に、相互に理解を図った上で教材作成を進めることですが、大人の関係とでも言いましょうか。
あえてお金という問題には触れずに、引き受けてやりきった後にさあ、それ相応のものをお願いしますね、ということは現実問題として日本のビジネスにおいてはよく起きます。
この講師との間でもそのような曖昧な関係性の中で、いざ完成後、期待してますよ、というメッセージが講師から届きました。
さあ、おっさん新人、さすがに前職で社会人経験は積んでいるとは言え、教材作成料の相場は知りませんし、そのセミナー会社の内規も知りません。
上司にその旨報告し、いくらの提示をすればよいかと指示を仰ぐと、なんとそれは社長決済だ、というではないですか。
まずここであれッと思うのですが、それ以上に目が点、ということが待ち受けていました。
社長決済と言っても、物を見せて、社長判断で教材作成料が決まる、という仕組みだったのです。標準化の概念はどこに行ってしまったのでしょう!
そして提示された額は、おっさん新人が不安になるほど低いものでした。
おっさん新人、さすがにこんな金額で良いのだろうか、と思いながらも社長まで話が進んで出た結論ですから、サラリーマンとしてやることは唯一つ。
講師に伝えるしかありません。
その結果・・・・・
開いた口が塞がらない。
おっさん新人、今度はその状況を見る側に回ることとなりました。
そこで全てがおじゃんになってもおかしくない状況に陥ったわけです。
一体どれくらい空白時間があったでしょうか。
その講師が大人過ぎました。
「わかった、教材作成料は一切いらん」
講師を断ることもせず、そして本番当日も手抜きをすることもなく、無事コースの立ち上げが終わることとなりました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
さあ、この物語。いつものことになりますが、どこがノンフィクションで、どこがフィクションなのか。それはあなたのご想像におまかせしたいと思います。
ですが、新しいセミナーを開発していくうえでの大事な部分を感じていただくことはこの物語からできるのではないかと思っております。
どうしてもどこまでが本当なのか気になる方は、直接お会いする際にも問いかけていただければ、と存じます。
スタンスとしては、こちらの記事(大成功か!? 私の講師デビュー物語)とほぼ同様なスタンスで書きました。
この先もこのような感じでお伝えすることを不定期でさせていただきたいと考えています。
(了)
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